希少価値が高く、高級食材の「シャトーブリアン」ですが、牛のどの部位を指すのかをご存知でしょうか?幻の部位、究極の赤身、などと呼ばれることもありますが、その言葉通りの部位だと思います。赤身ながらも非常に柔らかく、多くの食通たちをその虜にしています。
ただ、そのお値段もやはり別格です。シャトーブリアンはなぜそんなに人を惹きつけ、珍重されているのでしょうか。希少価値の高い理由、その味わい、おいしい焼き方などについてお伝えしていきたいと思います。
目次
最高級部位「シャトーブリアン」
シャトーブリアンとは、細長い形状をした牛のフィレ肉の中でも中央部分の最も厚みがあり肉質のよい部分です。非常に柔らかく、そしてキメが細かく、さらに形も素晴らしいです。究極の希少部位と言っても過言ではありません。
動物のお肉は運動量が多くなるにつれて硬くなります。しかし、シャトーブリアンは牛の体の中で最も運動量が少ない部位です。そのためとても柔らかいのです。
また、柔らかいお肉は一般的には脂身が多いものですが、シャトーブリアンはその脂身も少なく、そのうえ柔らかいというとても珍しい部位なのです。
シャトーブリアンという名前の由来
しかしまあ、シャトーブリアンとは洒落た名前が付いています。イチボ、ミスジ、サーロイン、いろいろな部位の名前がありますが、こんなにおしゃれな名前がつくお肉の部位の名前が付くこともなかなかないのではないでしょうか。
この名前は、フランス革命の頃の美食家として有名だった貴族の名前に由来しているそうです。その方のフルネームは「フランソワ・ルネ・ヴィコント・ドゥ・シャトーブリアン」です。
彼は、牛肉のその部位をあまりの美味しさから、そこばかり料理人に調理させて食べていたとのこと。そのことがシャトーブリアンを呼ばれるようになった由来だとか。
シャトーブリアンはどのくらい取れて、そのお値段は?
前述したように、シャトーブリアンはフィレ肉の中でも特に肉質のよい中央部分ですが、そのフィレ肉自体が牛1頭からわずか3%ほどと、本当にわずかしか取れない高級部位だと言えます。シャトーブリアンは、その希少なフィレ肉の中でもさらに選り抜かれた最高級部位です。
牛1頭からわずか600g程度しか取れない、ものすごく希少な部位です。そのことからどうしてもお値段が高くなってしまいます。インターネットで小売価格のリサーチをしてみると、150g程度で10,000円〜16,000円程度とやはり高価で、ブランド牛ともなるとそれ以上のものもあります。
ちなみに弊社がお肉を卸している、東京・五反田のステーキハンバーグ専門店「ミート矢澤」では、シャトーブリアンステーキ150gが9,350円です。(執筆時の価格)
シャトーブリアンはどんな味?
一般的に柔らかいお肉というのは、霜降り肉のように赤身の間に脂身が織り交ぜられることによって、その食感が生み出されるのですが、シャトーブリアンは牛の身体の中でも最も動かすことの少ない筋肉の部位です。
筋肉は、よく動く部分であるほど硬くなりますが、あまり使われない筋肉は柔らかくなります。
シャトーブリアンは柔らかいうえに脂肪が少なく、キメが細かく、舌触りの滑らかさと繊細さから、ワインと一緒に味わうとさらにその魅力が増します。シャトーブリアン独特の繊細で上品な奥ゆかしい味、香り、食感をぜひ堪能していただきたいです。
シャトーブリアンの美味しい焼き方
高級食材であるシャトーブリアンですから、レストランで注文すると当然もっと高価になってなかなか手が出ないものです。ですが、美味しいシャトーブリアンを買ってきてご自宅で調理するなら、比較的手軽にその素晴らしさを味わえると思います。
ここでは、お肉本来の美味しさを十分に味わえて、なおかつ失敗が少なくカンタンな方法をご紹介いたします。
シャトーブリアンおすすめの焼き加減
お肉の焼き方は、細かく分けると10種類ほどにも多岐に渡りますが、一般的には「レア」「ミディアムレア」「ウェルダン」の3種類が定番です。
レア
表面には焼き目が付いている状態だが、お肉の内部は赤さが残っている状態です。芯の部分は生ではなく、熱がじんわりと伝わっている状態です。
ミディアムレア
表面はしっかりと焼けていますが、中は完全に火が通っていない状態でピンク色が残る状態です。フランス語では「ビアンロゼ(はっきりしたピンク色)」とも呼ばれます。最もポピュラーな焼き加減と言えます。
ウェルダン
表面から中心部までしっかりと火が通り、赤い部分がない状態です。
シャトーブリアンのおすすめの焼き加減
お肉の焼き加減は人によってその好みが分かれるところですが、シャトーブリアンの美味しさを最大限に堪能するならば「レア」か「ミディアムレア」がお勧めです。
お肉は加熱することでタンパク質が固まり、歯でサクッと噛み切れるようになるので、生に近いほど噛み切るのが難しいです。しかし、シャトーブリアンほどの柔らかいお肉であれば表面をカリッと焼き上げるだけでも美味しく楽しむことができます。
シャトーブリアンを使ったおすすめレシピ
シャトーブリアンはシンプルに焼いてステーキで食べるのが美味しいのですが、今回は敢えてカツレツ(コトレッタ)にして背徳感を感じながらさらに美味しくいただくレシピをご紹介いたします。
シャトーブリアンのコトレッタ フルーツトマトとバジルのフレッシュソース
チーズを加えたサクサクの衣の中でゆっくり火を入れた極上のシャトーブリアンを、さっぱりとトマトとバジルのソースで頂く、贅沢かつシャトーブリアンの特性を活かしたレシピです。
材料(2名分)
・シャトーブリアン 150g×2枚
・塩・胡椒 適宜
・全卵 2個
・水 100cc
・薄力粉 200g
・パン粉 200g (市販の乾燥パン粉をフードプロセッサで細かくする)
・パルミジャーノチーズパウダー 70g
・揚げ油
(ひまわり油を推奨。量は鍋の大きさによるので、肉に衣がついた状態で、油にしっかり隠れる量で。具体的には肉の表面から2cm上を目安とする。)
STEP1
シャトーブリアンは調理の1時間半前に常温(目安は20℃)においておく。
STEP2
パン粉の細かさの目安はフラッシュモード(ボタンを押している間だけフードプロセッサーが回るモード)で 10 回フラッシュボタンを押しパン粉を細かくしボールにあけ、パルミジャーノパウダーとよく混ぜ合わせ深いバットか大きめのボールに入れておく。
STEP3
全卵をボールに割り入れ分量の水を入れる、あまり泡立てないよう白身を切るように水と混ぜ合わせる。
STEP4
フルーツトマトは洗ってヘタを取り5〜8mmの角切りにし、ボールに入れる。塩(マルドンではなく普通の方)をふたつまみ(1.5g-2g)加えトマトを潰さないようにやさしく混ぜ、バジルは固い茎を外し葉を小さくちぎって入れる。 潰したにんにくを加え、エクストラバージンオリーブオイルを一垂らしお好みで加えて軽く混ぜる。
STEP5
揚げ鍋にひまわり油を注ぎ中火で火をつけ、温度計で 190 度まで温めている間に、以下、6・7・8の工程を終わらせる。(画像の温度計は180℃を指していますが、190℃推奨です。)
STEP6
シャトーブリアンに塩と黒コショウを振る。多すぎる塩は肉から水分が出る原因になるので片側に塩少々(0.5g 程度)両面に振り5 分ほど置く。(塩を馴染ませるため。)
STEP7
シャトーブリアンに薄力粉をまぶし、余計な粉を刷毛で落とす。
STEP8
水を加えておいた溶き卵にくぐらせ、満遍なく卵を付着させ、軽く溶き卵を切りパン粉とパルミジャーノパウダーを混ぜた中に入れ、 表面を軽く押さえパン粉をまぶす。
STEP9
もう一度、水+溶き卵にくぐらせ、更にパン粉をつける。満遍なくパン粉がついたのを確認し、揚げ油の温度が180°Cになったら余計なパン粉を落とした後、気を付けて揚げ油に静かに入れる。
STEP10
片面15秒揚げひっくり返して、もう15秒揚げる。 その後、揚げ網(なければボールの中にざるを置いたもの)に取り2分間放置し余熱で火を入れていく。火は一度消しておく。
STEP11
火を再びつけて、揚げ油の温度が 170°Cになったら10の工程を繰り返す。
STEP12
3度目は190°Cまで温度を上げ、片面10秒揚げ、もう片面も10秒揚げ油をよく切る。
STEP13
お皿に油を切ったシャトーブリアンのコトレッタを盛りつけ、コトレッタにマルドンソルトを適宜振りかける。 フルーツトマトのソースをコトレッタの上に乗せる(にんにくはのせません。)パルミジャーノを粗目に削り、ブラックペッパーを振ったら、熱々を頬張る。
シャトーブリアンに合わせたいおすすめワイン
ワインは料理やお肉の格に合わせるのがセオリーではあるので、今回ご紹介するワインはカジュアルなものではありません。特におすすめしたいワインを2つほどご紹介したいと思います。
Barolo DOCG “Monprivato in Castiglione Falletto” / Giuseppe Mascarello
G マスカレッロといえば、古典派の代表格でありバローロの歴史上でも無視できない存在の造り手。実際現在のワイン法ではモンキエロで醸されたワインはBaroloを名乗ることが出来ませんが、マスカレッロだけはそれが許されています。というくらいBaroloに取って欠かすことの出来ない生産者です。
力強い味わいのイメージが強いバローロの中でも、マスカレッロに於いて特筆すべきことは、そのワインのエレガントさ。
唯一無二と言っても過言ではないほどの華やかで複雑な香りと、いつまでも続く余韻がグラスが空になった後も感じられます。
1904年からマスカレッロ家が所有するモノポール。レナート・ラッティが作成した最古のバローロのクリュを示した地図でも最良の畑として紹介されているモンプリヴァートのキュベです。
Olivier Bernstein / Gevray Chambertin
歴史は2007年からとまだ浅いものの彗星のごとく現れ、すぐに著名なワイン評論家からの高い評価を得たため瞬く間に入手困難となった造り手。
品質にとことん拘るあまり、生産本数はほんの僅かであり、世界中で取り合いになっている状態。全てのキュベがプルミエクリュ、グランクリュから作られるため、こちらの村名ワインもプルミエクリュ以上の葡萄が使われているが村名でリリースしているというこだわりです。
こちらのワインは非常に厚みがあり、なめし革やスパイスが果実の香りに勝る。収穫を最高の状態で行ったことによる果実の凝縮感があり、若々しく、ストラクチャーが強い。
価格以上の価値がある、見つけたらぜひ手にしておきたい、今後ますます注目したい造り手です。
おわりに
今回は牛肉の中でも非常に希少性が高いシャトーブリアンについてご紹介しました。柔らかくて脂身も少なく、キメが細かくて繊細な味わいを楽しめます。ぜひ一度召し上がってみてください。
レストランでプロに焼いてもらうのももちろんですが、今回ご紹介した方法でご自分で焼いてみるのもとてもお勧めです。他の部位にはないシャトーブリアンならではの魅力をより体感していただけると思います。
また、希少部位がこのように持て囃される傾向にはありますが、牛肉は効率ばかり求めてもつくれるものではありません。
より美味しいお肉を届けたいという強い想いを大切にし、ひたすら味にこだわりお客様にお届けすることを心がけています。シャトーブリアンについて知っていただくとともに、私どもヤザワミートという精肉卸のことも知っていただければ幸いです。