目次
イチボとは?
牛肉の部位の中で「イチボ」という名前を聞いたことがありますでしょうか?最近ではとても人気が上がってきている部位で、飲食店でステーキや焼肉のメニューとして、あるいはスーパーなどの小売店で見かけることも増えてきました。
サシが入っていて、なおかつ脂っこすぎず、赤身の旨味をしっかり感じ取れるジューシーな味わいが特徴です。
どこの部位?
イチボは、お尻のお肉の中の一部位です。ランプと呼ばれる、お尻の骨周りの柔らかい部分を切り出したお肉です。ランプがサーロインにつながっているのに対して、イチボは外ももにつながる部位です。
サーロインのような霜降りの入った脂の程よい甘み、そして柔らかさと味わいに、赤身特有の肉々しい旨み、それら両方を感じることのできる贅沢な部位です。
イチボという名前の由来
イチボという名前の由来には諸説ありますが、牛のお尻の骨の形が関係しているようです。骨がアルファベットの「H」の形をしていて「エイチボーン」と呼ばれています。
この真ん中の文字をとって「イチボ」になったとか、呼び方が訛って「イチボ」になったなどいろいろとありますが、そのような理由が有力なようです。
イチボの食感や味などの特徴
イチボは赤身肉のしっかりした肉々しい旨味に加え、ほどよく霜降りの入った脂の甘みを感じ取れるとても贅沢な部位だと言えます。
香りには甘さやコクが感じ取れるのですが、独特なキレのある香りがあります。あっさりしていながらジューシー。赤身と霜降りのバランスが良く、それぞれをいいとこ取りしたような部位です。
一頭から取れる分量
お尻の先っぽということで、一頭から約2~4kg程度しか取れないとても希少な部位です。
イチボの価格の目安
イチボの値段と言っても、輸入牛か和牛なのか有名ブランド黒毛和牛なのか、あるいは歩留等級や肉質等級などによっても大きく異なります。例えば輸入牛でしたら400円~500円ほどで販売されていることもあるようですが、ランクの高い黒毛和牛やブランド牛にはやはり高値が付いています。
食味のバランスの良さから、レストランなどにおいては前菜からメインまで様々な用途での使い勝手があり、和食、イタリアン、フレンチなど多様な業種の飲食店からも引合いが強くモモの部位の中でも最も高値で取引されている事が多いです。
イチボとほかの部位との違い
ここまではイチボについてお伝えしてきましたが、他の部位と比べるとどのように違うのでしょうか。
イチボと隣り合っている「ランプ」や、最近に焼肉店などで希少部位として人気の上がってきている「ミスジ」、そして牛肉の部位の中でも大人気で、代表的な部位とも言える「サーロイン」について、イチボと比較しながら紹介していきます。
ランプとの違い
ランプもイチボもモモに位置している部位で、ランプはお尻周辺の中でも腰からお尻にかかる部分のお肉です。(イチボはお尻の先側。)イチボは適度に脂が含まれています。
一方でランプは脂が少なめなので、あっさりとしています。脂もお肉の味わいも楽しみたいならイチボ、脂はできるだけ少ないほうがいいならランプ、といった具合で選ぶとよいかと思います。
肉の味わいだけで比較するなら、筋肉量の多いランプの方が濃いといえます。肉の味わいは基本的に筋肉の味で、脂が食味に影響をもたらす要素は「甘さ、コク、香り」です。
ミスジとの違い
ミスジは肩甲骨の内側にくっついています。一頭からわずか3kgほどしか取れません。肩から腕は牛もよく動かす運動量が多い部位なのですが、ミスジは細かい運動をする筋肉の部位です。
とても柔らかい部位で、特に黒毛和牛となると非常にきれいなサシが入り、とろけるような食感となめらかな脂の口どけを感じることができます。
キメは細かいのですが、イチボと比べると若干プリッとした食感があるのも特徴です。細かい筋が「プリッ、トロッ」といった独特な食感をもたらします。
イチボは人間でいうと骨盤周り、ミスジは肩甲骨周り、両者とも骨を支える細かい運動をする筋肉です。キメ細かい繊維になりやすく、希少で柔らかいことが共通点として挙げられると思います。
サーロインとの違い
サーロインについての理解を深めるためには、まずロースについて知る必要があります。実はサーロインはロースの仲間です。
牛肉の部位の中でも「肩ロース」「リブロース」「サーロイン」を合わせて「ロース」と言います。ひとことで言えば、ロースは背中周りのお肉で、英語ではロースでなく「loin」と呼び、和訳すると「腰肉」です。
サーロインの特徴は、適度にサシが入り込んでいるのでジューシーで柔らかい部位です。脂の甘みとお肉の旨味、芳醇な香りをぞんぶんに感じることができます。
イチボもサーロインも柔らかく濃厚な味わいがある点は共通していると思います。含まれる脂に関してはサーロインのほうが多く、よりコッテリとした味わいです。
また、サーロインは牛肉の中でもステーキ、すき焼き、しゃぶしゃぶ、焼肉など様々な用途で使える為、一般的に人気が高いので価格が高く付く傾向があります。
イチボとサーロインは香りにもそれぞれの特徴があります。サーロインには甘くまったりとした豊潤な香り、イチボは甘く、コクは感じますがキレのよい香りです。
リブロースやサーロインといったロース部位の最大の特徴は香りと余韻です。脂の甘さもさることながら、香りをより楽しめる部位だと言えます。
イチボを選ぶときのポイント
ステーキ やローストビーフ、タリアータなどに適しているイチボですが、なるべく美味しいお肉を選びたい方は、見分けるポイントを知っておくとよいでしょう。
2つのポイントを押さえておくことで、今日から牛肉を見る視点が変わります。
肉表面の潤い度合い
乾いているような肉や、逆に水っぽい肉は避けた方がよいでしょう。ツヤがあって鮮明な肉色のものがよいです。
霜降りの度合い
霜降りがはっきりと肉と分かれている、浮き出ているようなものではなく、肉に沈んでいるような霜降りを選ぶとよいです。
イチボの美味しい食べ方
モモ肉でありながらも柔らかく、適度なサシが入ったイチボはステーキとして食べるのがやはりイチ押しです。もちろんローストビーフにしたり、塊を焼いて薄切りにしたタリアータもお勧めです。また、あえて薄切りにして焼肉にしても大活躍の部位です。
今回の記事では、イチボのタリアータをご紹介します。
タリアータのレシピ
材料
つくりかた
STEP①
イチボは焼く1時間前に冷蔵庫から出し、ラップ若しくは真空パックのままおいて置き肉の温度を少し上げておく。
STEP②
マッシュルームは泥を落とし、濡れたキッチンペーパーで汚れを拭き、ルッコラは流水で洗いサラダスピナーで(なければキッチンペーパーで)水をよく切っておく。
STEP③
中火で煙が出る寸前までしっかり温めたフライパンに油をひかずに、フライパンに肉を置きます。
STEP④
5分ほど置いておいたら、またすべての面を一通り焼く。(面を一通り焼く⇒アルミホイルでくるむ、を8回ほど繰り返します。)
STEP⑤
肉を休ませている間にマッシュルームを2~3㎜程の薄切りにし、ルッコラは茎が固ければ固い部分を取っておきます。
STEP⑥
肉が焼けたかどうかはつまようじか竹串で中心を刺し、5秒後に素早く唇の下に当て中が温かくなっているか確認する。(スッと抵抗なくつまようじや竹串が刺さり、ぬるいよりもしっかり温かいくらいであればOKです。)
STEP⑦
最後にもう一度フライパンで肉の面を一通り焼き、肉を温め、その後まな板の上で好みの厚さに切り、マルドンシーソルトと挽き立て胡椒で味を調えます。
STEP⑧
ルッコラとマッシュルームは白ワインヴィネガーと塩とエクストラバージンオリーブオイルで軽く味をつけ、お皿に敷くように盛り付け、その上に切って味付けた肉を載せます。
STEP⑨
グラナパダーノをピーラーで剥くように薄く切り上から散らし、お好みでエクストラバージンオリーブオイル、挽き立ての黒コショウをかけ、肉が温かいうちに!
おわりに
最近とても人気が上がってきている部位のイチボについてご紹介しました。サシが入っていて、なおかつ脂っこすぎず、赤身の旨味をしっかり感じ取れるジューシーな味わいがこのお肉の魅力です。ぜひ食べてみてください。
ひとくちにイチボなどの話をしても、輸入牛肉と黒毛和牛とではまったく違ってきますし、買い付けの目利きやその生産者のポリシーによっても異なってきます。美味しい牛肉は、効率ばかり求めてもつくれるものではありません。
より美味しいお肉を届けたいという強い想いを大切にし、ひたすら味にこだわりお客様にお届けすることを心がけています。イチボについて知っていただくとともに、私どもヤザワミートという精肉卸のことも知っていただければ幸いです。